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2016. 10. 13  
新ルート開拓。

昔ほどの体力もなくなり、ようやく気持ちと体のバランスが取れてきて無謀なことは避けるようになってきた今日この頃。
ちょうど同世代の一人滝巡りをしている人物から連絡があった。
http://http://rotosouten1219.blog.fc2.com/blog-entry-16.html(参照)
「岩屋谷、行きたいのはやまやまなんだけど、みんなが行っているこんな長い道のりではどうも行く気にならない。驢さん、これどう思う?ダメもとで試してみませんか?」
『岩屋谷大滝極秘登山ルート申請書』
仰々しいタイトルのメールの内容は、降下地点まで行くのに考えられる限りの最短ルート。
高低差は考えず、2キロ弱。
面白い…
「どうだろう…無茶な気もするけどなぁ」
だが、これを面白いと思った時点で自分は行く気になっていた。
普段は二人とも単独行動なので失敗もするが、それを糧にしてきたつもり。
お互いが体と気持ちの不一致にくすぶり気味だったのだが、焼け木杭には火がついた感覚だ。
ただ、これを確かなものにしたい・・・

そうして今回のルートで岩屋谷へ臨むことにした。
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登山道までの大まかな行程はこういった感じ。
不動七重滝を過ぎ、右手に水晶沢が見えた所に2台くらい停車できるスペースがある。
そこに車を停め、前鬼川の渡渉ポイントを探る。
前方に対岸へ渡れる吊り橋があるが、落ちそうで心もとない。
結局、少し戻った所に落石注意の標識があり、ここからガードレールをまたいで入渓する。
少々勾配はあるが、ワイヤーの残骸をロープ変わりにして降り立った。
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降り立った前鬼川のなんと綺麗なことか。
これだけでも心が高揚してくる。

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水晶沢もなかなかの美しさ。
歩いているだけでも楽しい気分。
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ミニ大塚の滝(笑)
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出だしのこれだけでも正規ルートよりは楽しい。
距離にして500mくらいの遡行の後、河原が広くなる。
そして右手には明らかなガレた枯れ沢が現れる。
最初のうちはごつごつとした岩を登っていけばよいが、次第にザレて勾配もきつくなってくる。
それでも木々に捕まりながら登る。
これも500m前後の行程。
尾根が近づき、空が見えるのが待ち遠しい。
おじさんたちはさすがに休み休み。
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そして、尾根にたどり着くと進行方向はうっすらとした踏み跡のようなものがあるように思えた。
何度か見かけるワイヤーの残骸。
九十九折のような踏み跡。
そのうち尾根歩きも終盤になると勾配がきつくなる。
だが、若い木々が助けてくれる。
ここも距離にして500mほど。
シャクナゲが増えてきたら、もうすぐ登山道。
正規ルートの急登から単調な尾根歩きよりは、沢歩きあり、ガレ登りあり、尾根歩きありで、いずれも500mくらいの行程なので、おじさん達でももう一息と乗り越えられる。
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登山道に出たら降下地点までは200mほど。
マーキングを確認し、ザックを下す。
6時半に出発して9時前には着いた。
時間的にも体力的にも余裕があったので、行きにくいとされる雌滝から攻めることにした。
降下を開始してみると親切にもマーキングがしてある。
順調に雄滝へと行くためのルンゼの前までやってきた。
それから右に下るようにしてトラバースしていき、大きく開けた岩棚の手前まで行く。
だが、この岩棚は降りられそうもない。
そこで左を見ると雄滝へ行くために横切るルンゼが見えるので、平行移動するように近づいていくと簡単に降りられそうな場所を発見し、そのまま導かれるように降り立った。
あとは下るだけ。
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ドラマチックにも徐々に近づいてくるので、ドキドキ感で前だけを見て歩いているとコケた。
このあたりが心と体の不一致である。
気を付けなければ…
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裏を回り、正面へ。
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岩屋谷雌滝、落差70m。
ベールに包まれたかのような流れはもちろん秀逸ではあるが、周りを囲む強固な岩盤がなんといっても圧倒的。
飛沫が舞い飛び、濡れない場所がない。

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充分飛沫を堪能した後は雄滝へ。
横切るルンぜの前まで戻り行くのだが、小尾根を登る所が難所といえばここが一番の難所のように思えた。
5mほどの足場の怪しい所をまず自分が登り、お助けロープを垂らす。
あとは岩屋?を横切りもう一つの小尾根をまたいでいく。
あとは前ばかり見ていないで、踊る心も押し殺しながら進んでいけば・・・
岩屋谷雄滝、落差130m。
でかい・・・
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そして美しい。
水が、上部のほうで岩にぶつかり末広がりに落ちてくる。
この大きさでなかなか見ることが出来ない滝姿だ。
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礼儀正しい端正な分岐瀑。
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その真面目さを壊してやりたいくらい憎いやつ。
いやいや、自分の手には負えないだろう。
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正直、それほどの期待はしていなかった。
元来、大きな滝は嫌いとは言わないが、それほど興味がない。
それでも行程が面白そうだと行ったりもするが、ここは大きさも行程も対象外に位置する滝だった。
だけど、来て良かった。
期待と不安と入り混じった心躍る滝巡りとなった。
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滝評価 ★★★★★
滝マゾ度★★★




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2016. 06. 19  
秘瀑。
何をもって秘瀑と称されるかは疑問を感じる。
良い滝ならばわざわざ閉鎖的な呼び名はふさわしくない。
そう呼んでその滝の箔を付けたいだけか。
あまり好きにはなれない単語だな。
秘境の瀑布?
誰でも行けない卑怯な瀑布?
ではないよな。
秘密の瀑布?
だが、その存在を知ってはいるが、早々に人と出くわさない滝であるならば、自分にとってはそれが「秘瀑」と呼んでもかまわないかな。
そう考えると日光の霧降滝の上段とここは自分にとって秘瀑と呼んで差し支えないのかもしれない。

去年の今頃、「孤高のブナ」に会いに行った。
銅の精錬過程によって出た亜硫酸ガスにより、この辺りの山々は異様な雰囲気があった。
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だが今回は松木川沿いに延びる林道を歩いていると、その荘厳な姿に立ち止まらずにはいられなかった。
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鹿の放牧地。

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お茶をご馳走してくれるみたいだ。

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衛兵、ジャンダルムがそびえたつ!

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孤高のブナに見送られ、勝手に勇気をもらった気分になる。
今年も会いに行きたい。

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どの沢も鎧をまとった衛兵に守られている様相で近寄り難い。

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歩きはじめて2時間半が経っただろうか。
小足沢の出合いに到着。
林道の崩落は酷いものの、素晴らしい景色を堪能し、飽きることなく歩くことが出来た。
いつも一人で歩いていると、油断して仕事のことなど余計な事を考えてしまう時がある。
それでは意味を失う。
ここはそんな考えが浮かびもしない良い場所だ。
良い滝ではあるが、緊張感を誘ってくれる。
さて、いよいよだな。

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小足沢も衛兵に守られているようで、近づくことが出来ない。
出合いからもう200~300m歩を進める。
すると比較的傾斜の緩いガレたルンゼがあり、ここを一気に登る。
一気といっても疲れて両手を使わなければならない場所もあるが、とにかく道をそれることなく尾根まで這い上がっていく感じだ。


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尾根に到着。
ここからは痩せ尾根を下っていく。
途中、何度か切り立って進めないところがあり、進路を右にとったところで迷ってしまった。
一度下がった尾根の登り返しに手間どい、かなりのロス。
帰りは確かめるように進んでいったが、何故迷ったのか不甲斐無さを痛感。
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尾根の降下途中に見えるオロ北の大地。

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皇海山。

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尾根が左へと進路を向ける所で滝音とともに姿が見えてきた。
強者はロープを使い、このまま下へ降りるみたいだが、自分は50を過ぎた売れないピン芸人。
常に無謀なことはしないつもりだ。
だが、姿を確認しているこの瞬間は気が早っている。
冷静に冷静にと言い聞かせ、あたりを見回す。
ここから右へと下り気味にトラバース。
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行けるところまで行くと滝の全貌が見えるテラスに出た。
ここでしばらく辺りを眺める。
四方を強固な岩盤に囲まれた姿。
うれしくなるじゃないか。
行くしかないな。
一旦、戻ってもう少し下流へと進む。
この時はもうかなり冷静。
そしてここしかないと思った小さなルンゼから降下する。
最初は少し急でロープを出そうか考えていたが、次第に楽に下れるようになった。


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小足沢大滝。
凄いな。
孤高のブナにしても、この小足沢大滝にしても迷いなく、足尾の自然は揺るぎない存在感で佇んでいる。
上から見下ろすでもなく、無視するわけでもなく、ただそこにあるがままの姿。

自分が一人で来る理由はここにある。
この存在と一対一で対峙したいのだ。

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秘瀑…そんな単語は必要ない。

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あるがままの姿…憧れるなぁ。

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滝マゾ度★★★★
滝評価 ★★★★



2016. 06. 18  
山や滝へ向かう時、何とも言えない心地良い恐怖感がゾクゾクと刺激を誘う。
背後に感じる街の喧騒やぬくもりが徐々に遠ざかっていく。
もちろん振り返ることはない。
自分が本来の自分へとなっている最中だ。
なので、基本は単独。
本来の自分なんて、こっぱずかしく他人に見せられる訳がない。
また、自分本来の自由な解放感を得るためには、自分のあるがままの力で自然に立ち入ることだと思っている。
なので、装備は必要最低限。
自然と対峙することでしか、自由を疑似体験出来ないと思っている思考が正しいかどうかは分からない。
こんな事を書くなんて得体のしれない不安に苛まれているな。
歳取った(笑)
2016. 01. 11  
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昨年の11月、この時期に行くことは考えていなかったが、滝仲間を案内するために訪問した。
薄化粧に虹をまとった前川本谷大滝。
深緑の頃とは違った美しさ。
この姿を見た時に、頭の中は氷瀑の姿…
果たしてどんな衣をまとってくれるだろうか。

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Mt.乗鞍スキーリゾートの駐車場に車を停める。
今年は雪が少なく、スキー客は皆無だ。
だが、ここから三本滝レストハウス向かう県道84号は冬季閉鎖道路。
スノーシューを使うでもなく、前川林道まで歩いて行けた。

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謎の物体!?
何かの見張りか!?

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途中までは東京大学の施設があり、うっすらとトレースが残っており、比較的歩きやすかったが、雪はかなり深くなる。
スノーシューの出番だ。

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天気も良く、誰も踏み入られていない道を歩くのは、小さな破壊行為をしているみたいで、これまた小さなストレス発散になる。

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入渓地点には雪の花。
ここまで2時間弱。
まだ余裕。
スノーシューのまま橋を降り、入渓。
だが、何とも歩きずらい。
途中、スノーシューをデポし、アイゼンで先を進むが、さすがは人の入っていない場所。
時には胸あたりまで雪に埋もれ、体力を消耗させられる。
たまに思う遭難のシュチュエーション。
心地良いふわふわとした感覚。
M心をくすぐってくれる(笑)

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入渓してから3時間半。
しばらく口を開けながらニヤケている自分は容易に想像出来る。

乗鞍の白ワシが出迎えてくれた!

体力の消耗も伴い、思考能力は現実のものとはかけ離れたか。
その雄々しい姿にひれ伏したくなる。
いや、疲れているだけか…
雪のない時期であれば入渓して40分もあれば出会えるが、冬だからこそ出会える厳しい自然の姿を求めて、会いに行くたくなる。


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冬の前川本谷大滝。
カッコいい…

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カレー色のつららに合わせて注ぐ。


真冬の常布にも苦労したが、やはり来て良かった。
「孤高の佇まい」…憧れるなぁ。

滝評価 ★★★★★
滝マゾ度★★★★
2015. 09. 21  
前日「道の駅瀬女」でAURISさんと待ち合わせ。
AURISさんとは5年目にご一緒して以来。
普段は初めての場所の場合、人と行くことは少ない自分だが、今回は滝前で1泊する長い行程のため誰かと一緒に行きたかった。
AURISさんは滝百選は勿論のこと、全国1200滝を訪れている経験豊富な滝マニア。
ご一緒させてもらうには心強い人だ。

AURISさんのHP
http://dbazre152hbhxek.web.fc2.com/index.html

翌日5時、一里野スキー場のゴンドラリフトの山麓駅から延びる林道を走り、加賀定禅道からスタート。
ゆっくり無理せずに登山道を歩く。
百四丈滝展望台手前、美女坂の急登はつらかったが、7時間で降下地点である天池に到着する。
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さて、ここからが勝負になる。
天池辺りは比較的緩やかな勾配なので、無造作に降下を始める。
しかし、みっしりと生えた笹薮は滑るし、前が確認しづらい。
次第に笹薮が目の高さになっていき、視界を奪われる。
なので、視界があるうちに降下せず、水流跡を探す。
幸いにすぐみつかった。
水流跡は下が岩になっており、視界が確保出来るから足の置き場が出来る。
それでも終始よく育った笹薮をかき分けながら前へ進んでいく。
普段より大きなザックが本当に邪魔で、倒木などに絡まり思うように前へ進まず、少しイライラする。

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往路の時、どの当りから左に移動するかが迷った(青い線)。
何せ、灌木や笹薮でまるっきり視界がなく、ほとんどカンで小尾根を越えて再び枯れ沢へ移動した。
やがて百四丈の姿が見えてくる。
あとは道筋のはっきりしている水の流れている沢へ移り、川床へ降下した。

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夕方の5時。
出発してからちょうど12時間。
直瀑に萌えることは少ないが、そんなくくりはどうでもよい。
素直に素晴らしいの一言!
威厳があり、壮大で優美・・・どんな表現も陳腐になる。
ただ、自分がここに居る幸福感。
ニヤケずにはいられない。

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手取川の滝なので、銘酒「手取川」をどうしても飲みたかった。
格別の味。
めっちゃ、美味かった!

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滝の音を聞きながらの滝前泊。
滝巡りを始めた時にこんな事をするとは夢にも思わなかったな。
ほくそ笑みながらシュラフに包まるのだった。

AURISさん、ご一緒頂き、本当にありがとうございました。

滝評価 ★★★★★
滝マゾ度★★★★★
プロフィール

長佐驢馬

Author:長佐驢馬
人が嫌いなわけではありません。
それ以上に動物が好きなのかも。
それ以上に植物が好きなのかも。
それ以上に自然が好きなんです。

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